こんにちは。私は職業柄本気の料理を食べる必要があるのだが、例えば本気の料理には味が美味しいかという要素だけでなく、料理のコンセプト、食材の組み合わせ、考えられる食材の保存方法、盛り方、見せ方、器使い、メニューの価格帯、そこから計算される原価と利益率、客単価と席数から予想される一日の売上、インテリアやエクステリア、接客にみられる店員の感触、客層のターゲットなどを含めた店の雰囲気作り、創作料理のアイデアの魂胆、その他諸々の飲食店としてのあり方など、様々な要素が複雑に構成され、一つの本気、一つの一流を成しています。料理とは複合体なのです。そして東京には、様々な一流が集う本気の飲食店が多数存在します。私にとって食べるとは、ただ美味しいねと言いながら胃に収める行為ではなく、これら様々な要素を観察し、勉強していく行為なのです。仕事してないと何してたらいいかわからないな。一緒に修行していきましょう。
HAGI CAFE 古民家風カフェでサバサンド
日暮里、HAGI CAFEさんのサバサンド。木造アパートをリノベーションした古民家風カフェ。サバは一度焼き上げられており、レモンの風味が効いたオニスラが臭みを打ち消している。


神楽坂茶寮 日本茶と和風スイーツが充実
神楽坂の神楽坂茶寮さん。生麩と白玉のクリームあんみつ。こちらではお茶にもこだわっており、全国各地の煎茶、玄米茶、ほうじ茶などを取り揃えている。



たきおか カジュアルな立ち飲み屋さん
上野の立ち飲み屋、たきおかさん。立ち飲みは初めてでした。注文はいわゆるキャッシュオン。伝票管理ではなくオーダーするごとに代金を支払います。これは煮込み。

にんにく揚げ

白魚


ところでこれは不忍池。

これは浜離宮。

SALON GINZA SABOU 見た目にもこだわる和食と甘味のレストラン
銀座、SALON GINZA SABOUさんの茶房パフェ。枡に入った姿。ムースやわらび餅の上にホワイトチョコで蓋がされ、その上には抹茶パウダーで日本庭園をイメージした枯山水の模様が施されている。




加賀麩不室屋 麩がスイーツに
赤坂、加賀麩不室屋さん。様々な麩を取り扱うだけでなく、麩を使ったスイーツを展開。不室屋パフェ。生麩、手毬麩、おやつ麩など、各種異なる食感と風味の麩をよく調和させている。

こちらは別の機会に食べた車麩のフレンチトースト。麩ならではの素朴さを残しつつ、よく味の染み込んだ風味と柔らかいテクスチャ。ラスクのように焼き上げられたおやつ麩と、花形の生麩が食感に良いアクセントを与えている。



不室屋さんは金沢を中心に展開する歴史あるお店です。日本一周時に金沢へ行った際にも訪問しています。以下にて。
茶庭 然花抄院 京都発の本格和風スイーツ
渋谷、茶庭 然花抄院さん。京都発の和カフェ。実ノ膳という栗カステラや焙じ茶アイスなどを拵えたメニュー。見せ方が良い。


林屋茶園 歴史を感じる京風料理
目黒、林屋茶園さんのいちじくとチェリーの紅茶パフェ。この他にも湯葉うどんや葛煉りなど京風のメニューが充実。260年以上の歴史を持ち、棒茶、抹茶スイーツ発祥の店である京はやしやさんの姉妹店。



ぬく 創作料理の宝庫
目黒の割烹、ぬくさん。こじんまりとしたアットホームなインテリア。これは治部煮。やはり治部煮はうまい。好きな料理のうちの一つです。余計な具材は入れず、シンプルな形で提供している。

いちじく胡麻庵。私の感覚として、いちじくは食材としての強さが低く (ここでの強さとは料理の部品としての貢献度が高いかというニュアンスの言葉) 味が独特なため他の青果物と比して料理としての展開が難しいのだが、そんないちじくを風味高い胡麻庵と組み合わせて本来の甘みを引き立てる立派な逸品として仕立て上げている。経験上いちじくは原価が高く傷みも早いため、廃棄を減らすように例えば捌けるのがわかっているコース料理の一部として取り入れることが多いのだが、アラカルトの一品として用意するには相応の保存方法などが必要になるだろう。そのあたりの事情が知りたくなる。

蟹ステーキ。蟹の身を用いて熱い器に盛り付けた姿。

和食の定番料理だけでなく、創作料理も充実。気さくな店主の方と飲食業界や料理の話で意気投合しました。まだまだ食べたい料理が多い。また来ます。

ビスキュイテリエ ブルトンヌ 本格焼き菓子専門店
新宿、焼き菓子専門店のビスキュイテリエ ブルトンヌさん。自分で作ったものやスーパーのものじゃ満足できない、本物の焼き菓子を知りたい方におすすめ。

ファーブルトン。クレープや堅焼きプリンを思わせるもっちりとした食感と、甘みやバニラの風味の中にプルーンのほのかな酸味が漂う味わい。

クイニャマン。クロワッサンのような生地にバターの風味、アクセントとしての塩味が効いている。

ガレットブルトンヌ。厚焼きのクッキーといった感じで、ザクザクとした食感とバターの芳醇な風味と香り。焼き菓子の中で一番好きです。



番外編 中華街で食べ尽くす
別日ですが横浜に行きました。数時間で大量の食をします。



上海料理を中心に取り扱う梅蘭さん。牛バラ肉の醤油煮込み

モツの冷菜

渡り蟹の黒豆炒め


中国東北地方の料理専門店、東北人家さん。羊肉のクミン炒め

東北焼き冷麺



翡翠楼さん。やや古風なイメージをモチーフにしたインテリア。フカヒレスープ

大根餅

北京ダック



四川料理専門店の京華樓さん。ピータン豆腐

四川麻婆豆腐

小籠包



ご存知の通り中華は加熱調理と調味の主義というスタイルなのですが、その中でも地域によって、例えば素材には肉を主体とするもの、魚介を主体とするもの、麺や点心など粉食を用いるもの、香辛料を効果的に用いるものなどがあり、味には塩味の傾向、酸味の傾向、辛味の傾向、旨味の傾向などがあり、一口に中華といってもあらゆる違いがあることがわかります。これらの違いを意識しながら食べると勉強になりますね。みなさんは意識したことありますか?
余談ですが、祖父が定年後の旅行で福井の鯵を美味しく食べて、晩年の病床でその記憶を思い出して元気になったらまた福井の鯵を食べたいと語ったものの、叶わず亡くなったという話を聞いて、美味しいものを美味しいと食べられる喜びや記憶を植え付けることの唯一な価値を考えました。食と記憶、記憶と人生には密接な関連があります。
食を仕事にするデメリットとして、舌が肥えるというのがあります。すると何を食べても美味しくない、というより “美味しいのは当たり前だよね” という認識になり、味よりも大事にすべき要素を観察する目つきになる。味が美味しいのは料理の前提として当たり前であり、好き嫌いを考えても味が成り立ってないものは論外だと。冒頭にお話したように味以外の構成要素として、素材、調理法、保存法、原価、コンセプト、器使い、スタッフの動き、雰囲気、そんなことばかり考えていて、常に仕事のフィルターにかかった状態で食をするというしがらみに襲われます。例えば私が鯵を食べたところで感動なく鯵でしかないし、他人が感動するほどの美味しさでも私は感動より先に “そのような味がする” という感受をし、それ以外の要素を探すことになります。確かに美味しいとは感じます。しかしそれは、おそらく他人より何倍も小さな快楽です。
食をもっと等身大に素直に楽しめる、美味しいものをそのまま美味しいと食べられる人生も憧れるけど、とはいえ何かを好きでなければいけないという強迫観念からこだわりもなく何かを好きですと語ってからそれを極めなければならないと不安になっていたかつてより、仕事でも何でも何かを極めて肥えきった状態で勉強しもっと上を目指せる幸せもあるのでこれはこれでいい人生です。よかったですね。
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